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危急時遺言とは

2024.05.17  相続・遺言

遺言には、さまざまな種類があります。
今日は、とても珍しい「危急時遺言」がテーマです。

いきなり危急時遺言の話に入る前に、まずは実務上よく利用されている公正証書遺言と自筆証書遺言についてご説明します。

 

<公正証書遺言>

簡単にいえば、公証人が関与して作成する遺言です。公証人という公的な立場の人が関与して作成する遺言ですので、後で紛争になるリスクは低く、一番安全といってよいでしょう。法律専門家が遺言書作成のお手伝いをする時は、この公正証書遺言で作成することが多いです。公証人以外にも、証人2人以上の立会が必要です。

 

<自筆証書遺言>

公証人・証人の関与が不要で、遺言を遺したい人が、1人で作成することができます。

その名のとおり、自分で手書きしなければいけないという要件はありますが、

それを満たせば気軽に作成することができますので、公正証書遺言ほどではありませんが、実務上も利用されています。

 

<危急時遺言>

では本題の「危急時遺言」の話をしたいと思います。

先に述べたとおり、とても珍しい種類の遺言で、実務上使われる機会はあまり多くはありません。

しかし、ある場面においては、遺言を作成する唯一無二の方法がこの危急時遺言となるため、遺言者の意思を遺す非常に貴重な手続となります。

 

危急時遺言とは、今にも亡くなりそうな人が、証人3人以上の立会のもと、緊急で作成する遺言です。

 

さて、ここまで読んでみて、

「でも死亡の危機が迫っていたとしても、急いで自筆証書遺言や公正証書遺言を作成すればいいじゃないか。」と思った方もおられると思います。

 

しかし、自筆証書遺言は、財産目録を除いて、必ず全文を遺言者が自分で手書きしなければなりません(民法968条1項2項)。

死亡の危機が迫っている人は、病気等の事情によって自筆できないことが多いため、自筆証書遺言はあまり有効ではありません。

 

では、公正証書遺言はどうでしょう。

公正証書遺言は、署名することが原則ですが、例外として、公証人が署名できない事情を付記することで、署名に代えることができます(民法969条1項4号)。

よって、自署ができなくても作成できます。

なお、当然ではありますが、意識不明等で遺言者の意思を確認できないときは作成できません。これはどの遺言でも同様です。

 

しかし、公正証書遺言は、土日祝日は作成することができず(公証役場が休みのため)、また、例え平日だとしても公証人も忙しいため、その日に依頼して、即日に対応してもらうことは現実的にはなかなか難しいかと思います。

(状況によっては、即日対応してくれる公証人もおられますが、それを無理強いすることはできません。)

 

つまり、①自署ができず、かつ、⓶緊急で作成する必要がある場合は、危急時遺言が貴重な唯一の方法となるのです。

 

私が過去に作成した危急時遺言は、土曜日に相談を受け、その日に遺言書を作成する必要のある人でした。

 

このように状況に応じて作成する遺言書の種類が変わりますので、まずは、法律の専門家にご相談することをお勧めいたします。

 

さて、ここからは、どちらかというと法律実務家向けの話になります。

 

危急時遺言は、遺言の日から二十日以内に、家庭裁判所の確認を得なければ、その効力が生じません(民法976条4項)。

では、その危急時遺言確認審判申立書には何を添付すればよいのでしょうか。

私が家庭裁判所から求められたのは以下の3点です。

1.遺言者の戸籍

2.証人全員の住民票

3.医師の診断書(コピー可)

※診断書は、

 

危急時遺言確認審判申立後、通常、家庭裁判所の調査官が遺言者に面会などして遺言者の意思の確認を行います。

しかし、危急時の遺言ですから、調査官が調査を行うときには、既に遺言者が死亡していることもありますので、面会などは必須ではありません。

ただ、法律専門家としては、遺言者の死亡によって調査官が遺言者の意思を確認できない場合のために、危急時遺言を作成する様子を動画等で保存しておくべきでしょう。

 

さて、今日は少しマニアックな危急時遺言がテーマでした。

 

山鹿市のはる司法書士事務所では、

このようなイレギュラーな遺言書作成にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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